カトリカ大学医学部英語プログラム完全ガイド2025

大学情報

はじめに

カトリック大学(Università Cattolica del Sacro Cuore)は、イタリアの首都ローマにメインの医学部キャンパスを構える、1921年創立のヨーロッパ最大級の私立大学です。同大学の英語による6年制医学部プログラム「Medicine and Surgery」は、国際的な視野を持つ次世代の医師を育成することを目的としています。2025/2026年度の定員は、EU市民枠が40名、Non-EU市民枠(日本からの留学生はこちらに含まれます)が70名と、多くの留学生に門戸を開いています。

理論と実践を統合したカリキュラムと、最先端の大学病院での臨床実習を通じて、世界で通用する医療専門家としての確固たる基盤を築くことができます。

大学の基本情報と教育環境

創立、立地、アクセス

カトリカ大学(正式名称:Università Cattolica del Sacro Cuore)は、1921年に教育者であり、アゴスティーノ・ジェメッリ神父を含むイタリアの知識人グループによって設立されました。キリスト教カトリックの価値観に基づいた教育を理念として掲げています。医学部キャンパスは、ローマのモンテ・マリオの丘にあり、緑豊かな環境に位置しています。

所在地(医学部キャンパス): Largo Francesco Vito, 1, 00168 Roma RM, Italia

ローマ中心部のテルミニ駅からは、地下鉄A線でValle Aurelia駅まで行き、そこからFL3線に乗り換えてGemelli駅で下車します。駅からキャンパスまでは徒歩すぐです。

キャンパスと施設

大学の教育理念は「人間中心の教育と研究」であり、学生一人ひとりの成長を促す環境作りがキャンパス設計に反映されています。ローマキャンパスは、講義室、研究室、図書館といった学術施設と、臨床実習の場である大学病院が一体となっているのが大きな特徴です。

図書館は1961年に設立され、現在では25万1,000冊以上の蔵書と約7,000誌の定期刊行物(うち約4,000誌は現在購読中)を誇ります。総面積2,600平方メートルに及ぶ閲覧スペースには400以上の座席が用意されており、学生は静かな環境で学習に集中できます。

学生生活をサポートする施設も充実しています。キャンパス内には複数の食堂(Mensa)とカフェテリアがあり、手頃な価格で食事を提供しています。例えば、「Mensa&Caffè.23」では、平日のランチとディナーが楽しめ、学習スペースとしても利用可能です。また、文化センター「SpazioVivo」では、コンサート、美術展、演劇、文学コンクールなど、多彩な文化・レクリエーション活動が企画・運営されており、学生の交流の場となっています。

スポーツと学生団体

カトリカ大学では、学業だけでなく課外活動も推奨しています。スポーツ施設では、サッカー、バスケットボール、バレーボールなど様々なスポーツを楽しむことができます。学生団体も活発で、学術的なものから文化的なものまで多岐にわたります。留学生向けのサポートも手厚く、新しい環境にスムーズに適応できるよう、様々なイベントや交流会が開催されています。これらの活動を通じて、学生は専門知識だけでなく、コミュニケーション能力やリーダーシップも養うことができます。

卓越した研究力と国際的評価

提携病院・医療グループとの連携

カトリカ大学医学部の最大の強みの一つは、キャンパスに併設されたアゴスティーノ・ジェメッリ大学病院(Fondazione Policlinico Universitario Agostino Gemelli IRCCS)との緊密な連携です。1964年に開設されたこの病院は、1,581床を有し、イタリアで最大、ヨーロッパでも最大級の私立病院です。

年間を通じて膨大な数の患者を受け入れており、67の手術室、最新技術を備えた2つの心臓カテーテル検査室などを完備しています。診療科は8つの部門と140の専門ユニットに分かれ、多岐にわたる分野で高度な医療を提供しています。特に、成人先天性心疾患や希少心疾患の分野では、2012年から専門プログラムを設置し、国内外から高い評価を受けています。

米国の雑誌『Newsweek』による「World’s Best Hospitals」ランキングでは、2023年にイタリア国内第1位に選ばれるなど、その医療水準は国際的にも認められています。学生は低学年からこの最先端の医療現場に触れ、豊富な臨床症例を経験することで、実践的なスキルを磨くことができます。

研究実績の数値化

ジェメッリ大学病院は、イタリア保健省から研究・入院・ヘルスケア機関(IRCCS)として認定されており、臨床と研究が密接に結びついています。大学の研究活動は非常に活発で、年間数千本にのぼる査読付き論文が国際的な学術誌で発表されています。その研究の質は各種大学ランキングの「論文被引用数」スコアの高さに表れています。

研究資金の面でも、欧州研究会議(European Research Council – ERC)からの助成金をはじめ、国内外の競争的資金を多数獲得しており、多くの先進的な研究プロジェクトが進行中です。こうした研究環境は、学生が最先端の医学研究に触れ、将来研究医を目指す上でも大きなアドバンテージとなります。

主要大学ランキングにおける位置づけ

カトリカ大学は、複数の世界大学ランキングで高い評価を受けています。特に医学分野での評価は際立っています。

ランキングカテゴリーイタリア国内順位世界順位
QS世界大学ランキング2025総合第11位442位
QS世界大学ランキング2025生命科学・医学第8位196位
THE世界大学ランキング2025総合第10-13位301-350位
THE世界大学ランキング2025臨床・健康101-125位
Censis 2024/2025医学部(私立)第2位

(注:THEランキングの国内順位は、同順位帯の大学数により変動します。QSの総合順位は2025年版、分野別順位は2024年版が最新情報として公開されていますが、本記事では便宜上2025として記載)

QS世界大学ランキングでは、生命科学・医学分野で世界トップ200入りを果たしており、国際的な研究機関としての評価の高さがうかがえます。また、イタリア国内の大学評価機関であるCensisの2024/2025年版ランキングでは、私立大学医学部部門でミラノのサンラファエレ大学に次ぐ第2位にランクされており、国内でもトップクラスの教育機関として確固たる地位を築いています。

国際医師プログラム(英語プログラム)の徹底解剖

カリキュラムと教育方針

カトリカ大学の「Medicine and Surgery」プログラムは、6年間で360 ECTS(欧州単位互換制度)を取得する統合型カリキュラムです。このプログラムは、基礎科学の強固な理解から始まり、臨床スキル、倫理観、そしてプロフェッショナリズムの育成へとシームレスに移行するように設計されています。

1-2年次(基礎医学): 最初の2年間は、人体の構造と機能に関する基礎知識の習得に重点を置きます。

  • 主な科目: 生物学、化学、物理学、生化学、解剖学、生理学、組織学、分子生物学、微生物学、病理学一般。
  • 特徴: 講義と並行して、遺体解剖を含む解剖実習など、実践的なセッションが行われます。また、早期から「First aid and nursing practice」といった科目が組み込まれ、医療現場への導入が図られます。

3-4年次(臨床前教育): 3年次からは、臨床医学への橋渡しとなる科目が中心となります。学生は疾患のメカニズム、診断、治療法について学び始めます。

  • 主な科目: 薬理学、病態生理学、内科学入門、外科学入門、公衆衛生学、疫学、生物統計学、臨床神経科学、画像診断学。
  • 特徴: 3年次終了時には、臨床知識の定着度を測るため、国際的な医学基礎知識試験(IFOM – International Foundation of Medicine)の受験がカリキュラムに組み込まれています。

5-6年次(臨床実習): 最終の2年間は、ジェメッリ大学病院での臨床実習が中心となります。学生はローテーション形式で主要な診療科を回り、指導医のもとで実際の患者の診断や治療に参加します。

  • 主な実習科: 内科、外科、小児科、産婦人科、救急医学、精神科、地域医療(家庭医)。
  • 特徴: 6年次には、卒業論文(Final Thesis)の作成と、医師国家試験に備えるための実践的なトレーニングが行われます。学生は自らの興味に応じて特定の分野を選び、指導教員のもとで研究プロジェクトに取り組みます。

教育方法としては、伝統的な講義に加えて、問題基盤型学習(Problem-Based Learning: PBL)や少人数でのチュートリアルが積極的に取り入れられており、学生の能動的な学習と批判的思考能力の育成を重視しています。また、イタリア語の授業も必修となっており、患者との円滑なコミュニケーション能力を養います。

専門性を高める選択トラック/特色

カトリカ大学のプログラムは、学生が自身の興味やキャリアプランに合わせて学習を深められるよう、柔軟性を持たせています。
Vertical Domains/Electives: 各学年で選択科目が用意されており、学生は基礎研究、特定の臨床分野、医療人文学など、幅広いテーマから選択できます。
Optional Project: 各学年で、指導教員のもと小規模な研究プロジェクトや臨床経験に参加する機会が提供されます。これにより、早期から専門分野への関心を深めることが可能です。

国際交流も盛んで、大学はErasmus+プログラムに参加しています。これにより、学生はヨーロッパ各国の提携大学へ留学し、異なる医療制度や文化の中で学ぶ機会を得ることができます。これは、国際的なキャリアを目指す学生にとって非常に価値のある経験となります。


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入試制度と学費

入学試験の詳細

カトリカ大学の英語医学部プログラムへの入学は、大学が独自に実施する入学試験によって選抜されます。国公立大学で用いられるIMATとは異なる形式です。

試験概要

  • 形式: コンピュータベースのオンライン試験(自宅受験、遠隔監視システム使用)
  • 試験時間: 65分
  • 問題数: 65問
  • 科目配分:
    • 論理的思考 (Logical Reasoning): 20問
    • 生物学 (Biology): 18問
    • 化学 (Chemistry): 12問
    • 物理・数学 (Physics and Mathematics): 8問
    • 一般教養 (General Knowledge): 2問
    • 倫理・宗教学 (Ethical-Religious Culture): 5問
  • 採点方式: 正答: +1点、誤答: -0.25点、無回答: 0点

特筆すべきは「倫理・宗教学」に関する設問です。これはカトリック系大学としての特色であり、公式サイトでは準備のために特定の教皇文書(例: 『Caritas In Veritate』、『Laudato Sì』)を読むことが推奨されています。

出願資格、日程、費用

募集人数 (2025/2026年度)

  • EU学生: 40名
  • Non-EU学生: 70名(日本からの出願者はこちら)

2025/2026年度入試日程

  • 出願期間: 2024年10月21日~2025年2月21日
  • 試験日: 2025年3月18日(必要に応じて19日に追加セッションの可能性あり)
  • 結果発表(スコア確認): 2025年3月26日から
  • 順位発表・入学手続き: 2025年4月8日から(Non-EU枠)
  • 受験料: 公式サイトにて要確認(例年200ユーロ程度)

※上記はNon-EU受験生向けの主な日程です。最新情報は必ず大学の公式募集要項(Call for Competition/Bando)で確認してください。

英語能力要件

入学にあたり、CEFR(ヨーロッパ言語共通参照枠)のB2レベル以上の英語能力を証明する必要があります。認められる主な証明書とスコアは以下の通りです。

  • IELTS (Academic): 6.0以上
  • TOEFL iBT: 80以上
  • Cambridge English: FCE (B2 First) Grade B以上

証明書の提出は、出願時に必要となります。

年間授業料

カトリカ大学の授業料は、国籍のみでなく、学生の家庭の納税地によって決定されます。

  • EU学生: 家庭の収入に応じて年間約7,055ユーロから17,141ユーロ。
  • Non-EU学生 (海外在住): 固定で年間16,200ユーロ。

その他必要経費:

  • ローマ州の地方税(DIrSU)が別途必要です(年間約140ユーロ)。

支払い方法: 年間授業料は通常、複数回に分けて分割で支払います。最初の納付金は、合格後に席を確保するためのデポジットとして機能します。詳細は合格後に大学から通知されます。


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ローマでの学生生活

キャンパスライフと住居

カトリカ大学は、学生が勉学に集中し、充実した生活を送れるよう様々なサポートを提供しています。

学生寮 大学はEDUCattという財団を通じて、複数の学生寮を運営しています。ローマキャンパスの学生向けには、キャンパス内や近隣に寮が用意されています。

  • 主な寮: 公式情報なし(具体的な寮名、部屋数、費用はEDUCattのウェブサイトで直接確認が必要です)
  • 設備: 一般的に、部屋、共用キッチン、学習室、ランドリーなどが完備されています。
  • 申請方法: 入学許可を得た後、EDUCattのポータルサイトを通じてオンラインで申請します。部屋数には限りがあるため、早めの申請が推奨されます。
  • 費用目安: 大学公式サイトによると、住居費は年間6,000〜7,200ユーロと見積もられています。

民間賃貸 ローマでアパートを借りる学生も多くいます。家賃相場は立地や部屋のタイプによって大きく異なります。

  • 大学周辺 (Monte Mario, Balduina地区): シングルルームで月額450-650ユーロ
  • 学生に人気の地区 (Prati, San Lorenzo地区): 月額500-700ユーロ

月間生活費の目安(住居費除く): 大学の公式見積もりによると、以下の通りです。

  • 食費: 約160-180ユーロ
  • 交通費: 約20-30ユーロ(年間パスは250ユーロ)
  • 個人経費・その他: 約180-375ユーロ

合計で、住居費以外に月々400〜600ユーロ程度を見込むのが一般的です。

ローマの魅力

「永遠の都」ローマは、人口約280万人のイタリア最大の都市であり、歴史、芸術、文化の中心地です。気候は地中海性気候で、夏は暑く乾燥し、冬は温暖で過ごしやすいです。治安は、観光地や駅周辺ではスリや置き引きに注意が必要ですが、大学周辺の住宅街は比較的安全です。

市内の交通は、地下鉄、バス、トラムが発達しており、学生向けの年間パス(250ユーロ)を利用すれば非常に便利です。国際的な大都市であるため、観光地や中心部では英語が通じやすいですが、日常生活ではイタリア語が役立ちます。日本人コミュニティや日本食レストラン、食材店も存在し、日本人留学生にとって生活しやすい環境が整っています。休日は、古代ローマの遺跡巡りや美術館訪問、あるいは少し足を延ばして美しい海岸や田園地帯への小旅行も楽しめます。


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まとめ

本記事では、ローマにキャンパスを構える私立大学であるカトリカ大学の英語医学部プログラムについて、大学の公式情報、政府機関のデータ、国際的なランキング情報といった信頼性の高い情報源のみに基づき、その詳細を解説しました。

カトリカ大学は、イタリア最大規模を誇る最先端の大学病院での豊富な臨床実習と、私立大学ならではのきめ細やかな教育体制という点で、特に高いレベルの臨床能力を身につけ、国際的な医療現場で活躍することを目指す学生にとって理想的な選択肢となっています。独自の入学試験では、論理的思考力や科学的知識に加え、倫理観も問われる点が特徴的です。

当校では、最新の大学情報はもちろん、合格者の実体験や現地病院の事情などを総合して、志望校選びや入試対策をサポートしています。無料の個別相談会も随時実施しております。「直接話を聞いてみたい」という方はお気軽にお申し込みください。複雑な出願手続きや受験準備を円滑に進めるためのアドバイスはもちろん、現地での生活サポートや卒後の進路に関する情報もお伝えいたします。

ホームページでは「イタリアの医学部に関する情報」や「当校のサービス内容」も掲載しているので、「もっとイタリアの医学部に対して知りたい」という方はぜひ一度ご覧ください。

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参考文献

  1. Università Cattolica del Sacro Cuore 公式ウェブサイト
  2. Fondazione Policlinico Universitario Agostino Gemelli IRCCS
  3. QS World University Rankings 2025
  4. Times Higher Education World University Rankings 2025
  5. Censis – Classifiche Università Italiane
  6. ANVUR – WFME Accreditation