はじめに
南イタリアの名門として有名なイタリア・ローマにある私立大学カトリカ大学。カトリカ大学の医学部英語コース(International MD Program)は、世界中から学生が集まる国際的なプログラムです。医学部を目指す日本の高校生や大学生、留学を考えている方、そして海外医学部進学を検討している保護者の皆さんに向けて、カトリカ大学英語医学部の魅力や実際の様子を基本とな情報からカリキュラム、学生生活、卒業後の進路に至るまで、しっかりお届けします。
設立の背景と沿革
カトリカ大学は1921年創立のカトリック系私立総合大学であり、ヨーロッパ最大規模の私立大学として知られています。医学部は1958年にローマキャンパスに設立され、1960年代前半には付属のアゴスティーノ・ジェメッリ大学病院が開院しました。ジェメッリ病院は大学創設者でフランシスコ会士でもあった医師アゴスティーノ・ジェメッリにちなんで命名され、以来同医学部の教育病院として機能しています。長年にわたりイタリア人医師の養成に実績を持つカトリカ大学は、国際化の流れを受けて2013/2014年度に英語による6年間の医学教育課程「Cattolica International」、通称IMD(International Medical Doctor)プログラムを初めて開設しました。これはイタリアの私立大学ではサン・ラッファエレ大学やヒューマニタス大学に続く英語医学部の設置であり、以来カトリカ大学ローマ医学部はイタリア人のみならず世界中から学生を受け入れるグローバルな医学教育拠点となっています。
教育理念とカリキュラム
カトリカ大学IMDプログラムの教育理念は、「人間中心のヘルスケア」の実践者を育成することにあります。医学知識を臨床能力へと昇華させ、プロフェッショナリズムに倫理観と社会的責任を統合することが重視されています。カリキュラムは欧州と米国双方の医学教育カリキュラムを統合した革新的な構成となっており、6年間を通じて基礎科学と臨床医学を並行して学ぶアプローチが採られています。環境や社会的要因を含む包括的な医療観を涵養しつつ、早期から患者と接する臨床実習を経験できるよう工夫されており、法医学や医療倫理、医療人類学、患者家族とのコミュニケーションといった領域もカリキュラムに組み込まれています。授業は英語で行われる講義形式に加え、症例ベースの学習(PBL)や実習を重視した指導が特徴です。学生は大学キャンパス内にあるジェメッリ病院で日常的に臨床訓練を積む機会が与えられ、少人数グループでの演習やチューター指導を通じて実践力を養います。またカトリック大学ならではの特色として、在学中にキリスト教思想に基づく神学セミナーを毎年履修することが義務付けられており(年間36時間)、医療者として人間の尊厳や倫理について深く考察する機会ともなっています。
国際的な連携とプログラム
IMDプログラムは全課程を英語で行うため、多国籍の学生が集う国際的な学習環境が整っています。在学生の出身国は15カ国以上に及び、2013年の英語課程開設以来、累計で60以上の国から学生が参加しています。また国際的な医学生ネットワークであるIFMSA(国際医学生連盟)のイタリア支部活動(SISM)が学内で展開されており、学生主導で海外の医療ボランティアや短期臨床実習プログラムに参加することも奨励されています。
英語医学課程であるIMDプログラムの大きな強みは、卒業後の進路の選択肢が世界に広がる点です。カリキュラム自体が米国医師国家試験(USMLE)にも対応して組まれており、在学中からStep1・Step2試験への準備ができるよう配慮されています。実際、英語課程の卒業生はUSMLE Step1・2を受験する資格を得られ、米国での臨床研修(レジデンシー)に出願することも可能です。さらに欧州やその他の英語圏諸国のプログラムにも卒業資格で直接応募できるため、真にグローバルなキャリアパスが開かれています。特筆すべきは、米国トーマス・ジェファーソン大学(シドニー・キンメル医科大学)との提携によるダブルディグリープログラムです。選抜された学生は本プログラムにおいてローマと米国フィラデルフィアで各3年間(計6年)学ぶことで、カトリカ大学の医学修士号(イタリアの医学位)に加え、ジェファーソン大学の理学士号および医学博士号(MD)の3つの学位を取得することが可能です。この「3+3」共同プログラムを修了した学生は、追加の国家試験を受けることなく欧州連合全域および米国で医師としての資格承認を得られるため、画期的な取り組みとして注目されています。以上のようにカトリカ大学医学部では、英語で医学を学びながら多彩な国際機会を活用できるよう設計されています。非イタリア人学生向けには医療現場で必要となるイタリア語集中講座も提供されており、言語の壁を乗り越えて地域社会に適応するサポートも充実しています。
研究体制と環境
カトリカ大学医学部の教育・研究活動は、付属のジェメッリ大学病院と密接に連携して行われています。ジェメッリ病院はNewsweek誌の病院ランキング(2024年版)で「イタリア最高位、世界第35位」に評価された名門病院であり、年間を通じて高度医療と先端研究が推進されています。病院は1500床以上の規模を持つ国内有数の総合病院で、がんや心疾患から感染症、移植医療まで幅広い分野で専門センターと研究所が設置されています。カトリカ大学ローマキャンパスには医学部の各講座・研究所に加え、18の研究センターが置かれており、基礎から臨床まで幅広い研究プロジェクトが日々行われています。医学部の教員は各専門領域のトップクラスの医師・研究者が揃っており、学生は講義や実習を通じて最先端の知見に触れることができます。ジェメッリ病院は特に臨床研究にも力を入れており、たとえば2020年以降の新型コロナウイルス感染症への対応でも国内をリードする役割を果たしました。こうした恵まれた環境の中、学生たちは日常的に実際の患者症例に接し、稀少かつ複雑なケースも含め多様な臨床体験を積むことができます。このことは単に座学で知識を得るだけでなく、医学の発展に寄与する研究マインドや問題解決能力を養う上でも大きな財産となっています。カトリカ大学医学部は教育と研究の質において国際的にも高い評価を得ており、そのことは世界60カ国以上から志願者が集まる入試応募状況にも表れています。
キャンパスの施設とインフラ
ローマキャンパスは市内北西部の緑豊かなモンテマリオ地区に位置し、ジェメッリ病院と大学の医学部校舎が一体となった充実の教育環境を提供します。キャンパス内には学生寮、図書館、スポーツ施設、食堂やカフェテリアなど学生生活を支えるインフラが整っています。学生寮はキャンパス内外に複数あり、EDU.catt(大学付属の学生支援機構)によって運営されています。キャンパス内寮は相部屋形式で各フロアに共用ラウンジとキッチンを備え、授業棟へのアクセスも良く国際学生コミュニティとしての交流の場にもなっています。キャンパス外の提携寮も大学から通いやすい立地にあり、ローマでの住環境を安心して確保できるよう配慮されています。図書館は1961年に医学部の創設に合わせて開設され、現在25万冊以上の蔵書と8千種以上の学術雑誌を所蔵しています。館内には5つの閲覧室に約400席の自習スペースがあり、医学生の学習と研究を強力に支えています。キャンパス内にはサッカー場、テニスコート(3面)、バレーボール・バスケットボールコート等のスポーツ施設も完備されており、定期的に学生や医局員によるスポーツ大会が開催されるなど、勉学以外のリフレッシュや交流の機会も豊富です。また、キャンパス内の医務室(ヘルスセンター)では週一回、校医による学生向けの無料診療相談が行われており、留学生も含めた全学生の健康管理をサポートしています。EDU.cattはこの他にも奨学金や経済支援、キャリア支援など学生生活全般にわたるサービスを提供しており、イタリア外から来た学生も安心して学業に専念できる体制が整っています。ローマという歴史と文化の都に位置する利点も大きく、授業の合間には市内の名所巡りやイタリア文化に親しむことができる点も魅力です。国際都市ローマでの生活を通じて培われる多文化理解や適応力は、将来グローバルに活躍する医師を目指す学生にとって貴重な財産となるでしょう。
まとめ
カトリカ大学医学部は、英語で医学を学び国際医師への道を進みたい日本人学生にとって、大変魅力的な選択肢です。世界中の仲間と切磋琢磨しながらグローバルな視点と高度な知識・技術を身につけることで、将来は日本のみならず世界を舞台に活躍できる可能性が広がります。入学までのハードルは決して低くありませんが、その先に得られるものは計り知れません。
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