はじめに
南イタリアの名門として有名なイタリア・ローマにあるビオメディコ大学。ビオメディコ大学の医学部英語コース(International MD Program)は、世界中から学生が集まる国際的なプログラムです。医学部を目指す日本の高校生や大学生、留学を考えている方、そして海外医学部進学を検討している保護者の皆さんに向けて、ビオメディコ大学英語医学部の魅力や実際の様子を基本とな情報からカリキュラム、学生生活、卒業後の進路に至るまで、しっかりお届けします。
設立の背景と沿革
ビオメディコ大学(正式名称:Università Campus Bio-Medico di Roma)は、1993年に開学した比較的新しい私立大学です。ローマ郊外のトリゴリア地区に広大なキャンパスを構え、医学・医療系教育と研究に特化して創設されました。創立者の一人であるオプス・デイの指導者アルバロ・デル・ポルティージョ司教の提言により、「生物医学の中心に人間の価値を据える」ことを理念として設立され、そのモットーも「人間のための科学(La Scienza per l’Uomo)」です。1993年に医学部と看護学部で初の学生受け入れを開始し、翌1994年には大学附属病院(ポリクリニコ)が開院、続いてバイオメディカル研究用のラボも整備されました。1999年には工学部(生体医工学コース)を新設し、2001年には医学部の専門医養成課程(スペシャリゼーションスクール)も発足するなど着実に発展を遂げています。2008年にはローマ南部の自然公園(デチマ・マラフェデ保護区)に隣接した現在の新キャンパスが完成し、新病院棟と先端バイオ医学・生体工学研究センター(PRABB)も開設されました。この新キャンパス用地は名優アルベルト・ソルディからの寄贈も受けており、緑豊かな環境の中に最新設備の医療・研究施設が統合されています。開学以来、「人間中心の科学」という理念のもと教育・研究・医療を一体化させた独自の大学モデルを発展させており、近年では世界大学ランキング2024においてイタリア国内トップ20に入る評価も得ています。現在の学生数は約2,600名程度で、規模としては小規模大学に分類されますが、その分教員と学生の距離が近いアットホームな校風を特徴としています。
教育理念とカリキュラム
医学部の教育理念は「人間中心の医療人育成」であり、単なる知識注入ではなく学生の主体性や批判的思考力を育むことに力を注いでいます。教員と学生の比率は1対14と低く、教授陣はチュートリアル形式の対話型教育を日常的に実践しています。少人数グループによるアクティブラーニング(いわゆる問題基盤型学習=PBL型の教育手法)を取り入れ、討論やケーススタディを通じて学生自ら問題解決策を探究する場を提供しています。全学生にパーソナルチューターが一人ずつ割り当てられ、学習方法の指導やメンタル面のサポートが行われるなど、個々の成長に寄り添う体制です。このような手厚い指導により、学生は自己学習能力や柔軟な思考力を磨き、自立した医療人として成長していきます。
カリキュラム面では、6年間一貫の医学教育課程を展開しています。最初の2年間で解剖学・生理学・生化学・遺伝学などの基礎医学を徹底的に学び、3年次から臨床実習が開始されます。大学附属病院で早期から患者と接する機会が設けられており、シミュレーション実習や臨床技能トレーニングも段階的に導入されています。臨床実習開始前には「臨床実習準備学」というプレパレーション科目で診療の基本姿勢を養うなど、実地に出る前の準備も手厚く行われます。またカリキュラムには医学知識だけでなく、生命倫理や医療人文科学の科目も組み込まれており、中盤の3年次には医療倫理や医療法制、異文化理解などについて学ぶ機会があります。多民族化・グローバル化が進む現代社会に対応するため、移民医療や新興感染症など国際的な課題にも目を向け、国内外で問題となっている疾病への対処法を学ぶ視野を養うことが強調されています。試験は筆記試験と口頭試問の双方を課す科目が多く、知識の暗記だけでなく口頭で論理的に説明できる力も評価されます。これにより、卒業までに知識と思考力、コミュニケーション力を兼ね備えた医師を育成しています。こうした教育方針の成果もあり、卒業生の就職率は高く(修士課程修了1年後の就職率87.1%は国内平均75.7%を大きく上回る)、ほとんどの学生がストレートに卒業するなど学修成果も顕著です。学生の主体性と批判的思考力を尊重するビオメディコ大学の教育環境は、「教授が学生の名前を覚えている大学を想像してみてください」というスローガンにも象徴されるように、教員と学生の距離が近く温かな指導によって支えられています。
国際的な連携とプログラム
ビオメディコ大学は国際性にも優れており、キャンパス内では多文化が共存する学習環境が整っています。医学部では英語による6年制医学コース(MD課程)を2019年に開設しており、イタリア人だけでなく世界各国から学生を受け入れています。この英語コースの履修言語は全て英語であり、在籍中に医療英語はもちろん国際医学で通用するコミュニケーション能力を身につけることができます。教授陣にも海外で研鑽を積んだ人材が多く、授業や指導はグローバルスタンダードに準拠した内容です。また、ビオメディコ大学は世界医科大学名簿(WDOMS)に掲載されており、ECFMG(Educational Commission for Foreign Medical Graduates)認定校として米国での医師ライセンス取得手続き(USMLE受験資格)も満たしています。実際に同大学の卒業生からは、「在学中に培った確かな基礎のおかげで米国医師国家試験(USMLE)に短期間で合格できた」という声も上がっており、国際水準の教育によって卒業生の海外での活躍が現実のものとなっています。
留学プログラムも充実しており、全学生が Erasmus+(エラスムス)プログラム を利用してヨーロッパ各国の提携大学へ交換留学する機会を得られます。医学部生の場合、エラスムスを通じた海外大学での一時留学に加え、卒業研究や臨床実習を海外で行うことも可能であり、実際に在学中にフィラデルフィア(アメリカ)で臨床研修を経験した学生もいます。大学側も教授陣を通じて「国際経験への積極的な挑戦」を奨励・支援しており、希望者には海外研修の調整や推薦状の発行など手厚いバックアップが提供されています。さらに、大学内の国際オフィスが中心となって学生の海外渡航手続きや語学学習をサポートしています。例えば、外国語習得のための語学センターでは各種語学検定対策講座が開講され、学生同士がペアを組んで互いの母語を教え合う「タンデム・プログラム」も用意されています。こうした取り組みにより、在学中から異文化交流に触れ語学力を磨くことができる環境です。大学卒業後の進路も国際的に開かれており、イタリア国内で医師として働く資格はもちろん、欧州共通の医学学位を活かしてEU各国で研修医プログラムに進んだり、USMLE合格を経て米国のレジデンシープログラムに参加する卒業生も輩出しています。研究志向の学生には海外の大学院博士課程への進学機会もあり、国際保健機関やNGOで活躍する道を選ぶ者もいます。ビオメディコ大学はこのように留学・国際キャリア支援の両面で体制が整っており、「グローバルに通用する医師」を目指す日本人学生にとっても大きな魅力となっています。
研究体制と環境
ビオメディコ大学は教育と研究の統合を掲げており、その研究体制も充実しています。大学附属のポリクリニコ(大学病院)は30以上の診療科・診療ユニットを備え、イタリア国民保健サービス(SSN)と提携して地域医療に貢献しつつ、臨床研究の基盤ともなっています。附属病院は現時点では国から公式なIRCCS(科学研究医療機関)の認定は受けていませんが、患者ケアと臨床研究を一体的に行う先端的施設として機能しています。そのため医学部生は臨床実習や見学を通じて最先端の臨床研究に触れる機会が得られます。また、同大学は医学部・工学部・環境科学部の3学部が連携するユニークな組織であり、学際的な共同研究が盛んな点が大きな特色です。実際に全研究プロジェクトの70%以上が異分野融合型であり、医師・看護師・工学者・栄養学者などがチームを組んで研究に取り組んでいます。重点研究分野としてはロボット手術、生体計測センサー、バイオマテリアル(生体材料)、ナノテクノロジー、IoT医療応用など先端的テーマが多く、各分野に専門の研究ユニットと最新設備のラボラトリーが用意されています。学部生の段階から研究への参画が奨励されており、希望者は各研究室に所属して卒業研究やプロジェクト活動に取り組むことも可能です。
キャンパスの施設とインフラ
ローマ郊外の自然保護区に囲まれたビオメディコ大学キャンパス。中央の茶色の建物が大学附属病院で、最先端の医療教育・研究の拠点となっている(デチマ・マラフェデ公園より望む)。キャンパスは2008年に整備された比較的新しい施設群からなり、講義棟・研究棟・病院棟が一体化した効率的な配置が特徴です。広大な緑地に囲まれた環境で空気が澄んでおり、学生は静かな雰囲気の中で勉学に集中できます。また主要施設が徒歩圏内に集約されているため、医学部・工学部・栄養学部など学部の垣根を越えた学生同士の交流も日常的に行われています。キャンパス内には最新設備の講義室や実習室が完備されており、医学教育用には高度なシミュレーションセンターも設置されています。臨床実習前の学生はシミュレーション用マネキンやバーチャル患者を使ったトレーニングで診療技能を磨くことができ、実習に出てからも反復練習が可能です。図書館は医学・科学分野の蔵書が充実しており、電子ジャーナルへのアクセスも提供されています。自習スペースやグループ学習室も多数あり、24時間利用可能なエリアも設けられるなど学生の学習ニーズに応えています。
生活インフラ面でも学生支援が行き届いています。キャンパス内外に学生寮や大学提携のアパートが用意され、遠方から来た学生も安心して生活できる環境です(学生向けの宿舎紹介サービスあり)。キャンパスにはカフェテリアや食堂も併設されており、手頃な価格で朝食・昼食をとることができます。食堂ではイタリア料理はもちろん各国の料理イベントも開催され、国際色豊かな学生コミュニティに好評です。さらに、キャンパス内にはATMや書店、コピーセンター、医療クリニックなど日常生活に必要な施設も揃っています。スポーツ施設も充実しており、敷地内にはジムや運動場が整備されています。学生スポーツクラブではバスケットボール、サッカー、バレーボール、ラグビー、陸上など様々な種目のチームが活動し、学年間の交流を深めています。文化・課外活動にも力を入れており、劇団や合唱団、学生主導のイベント(キャンパス・ゴット・タレント等)も盛んです。ボランティア活動ではローマ市内の福祉施設での支援や、発展途上国への医療支援プロジェクトに参加する機会も提供され、社会貢献と自己成長を両立できるプログラムが用意されています。このように、ビオメディコ大学のキャンパスは学業設備から生活支援まで統合的に整備されており、学生が学習に専念しつつ豊かな大学生活を送れるインフラが整っています。
医学と他分野の連携
ビオメディコ大学最大の特徴の一つが、医学と他分野との統合教育です。医学だけでなく工学や生命科学、倫理学など幅広い分野を横断するカリキュラムを展開し、医療の未来を切り拓く人材を育成しています。特に注目すべきは、同大学が近年開始した「MedTech(メドテック)」ダブルディグリープログラムです。これは6年間で医学博士号(MD)と生体医工学の学士号(BSc)の両方を取得できる革新的なプログラムであり、イタリア国内でも数少ない取り組みです。MedTechコースでは医学部と工学部が共同でカリキュラムを運営し、解剖学や病理学などの医学科目と並行してプログラミング、生体信号解析、医療機器工学などの工学系科目を履修します。在学中、医学生は附属病院での臨床実習に加えて工学系の実験実習や研究プロジェクトにも参加し、医学知識と工学的アプローチの両方を実地で身につけます。大学側はこのプログラムのために英語による生体医工学の学士課程(3年制)も新設しており、MedTech在籍者は所定の追加単位を履修することでMDとBScの二重学位取得資格を得られます。医療と工学の融合により、将来はAI診断やロボット手術といった先端技術を使いこなし、自ら新たな医療デバイスやシステムの開発にも関与できる「医工学医」の育成を目指しています。
他分野との連携は工学以外にも及んでいます。たとえば医学部と食品栄養学部の協働により、栄養学と医学の統合科目が提供され、食事療法や公衆衛生栄養に関する知識を医学教育に取り入れています。また環境科学部(持続可能な開発・ワンヘルス学部)との連携で、One Health(ワンヘルス)の視点を涵養する教育も行われています。ワンヘルスとは、人間の健康と動物・環境の健康が一体であるという考え方であり、同大学では感染症対策や環境疫学の講義でこの概念を教えています。さらに、上述のとおり倫理・人文科学教育にも力を入れており、FAST研究所を通じて医学と倫理・哲学の対話を促進しています。医学生は医学史や医療倫理の授業で哲学者や倫理学者から直接学ぶ機会があり、テクノロジーが進歩する時代においても人間性を見失わない医療人を育てることに寄与しています。これら多領域との統合教育により、学生は単なる臨床知識だけでなく広い視野と複合的なスキルを身につけることができます。ビオメディコ大学はまさに「医学と他分野の融合」のモデル校と言え、医療と工学・科学と倫理など垣根を越えた学びの場が用意されています。それにより卒業生は高度専門職として現代の複雑な医療課題に対応できるだけでなく、異分野チームの中核となって新しい価値を創造できる人材へと成長していきます。
まとめ
ビオメディコ大学医学部は、英語で医学を学び国際医師への道を進みたい日本人学生にとって、大変魅力的な選択肢です。世界中の仲間と切磋琢磨しながらグローバルな視点と高度な知識・技術を身につけることで、将来は日本のみならず世界を舞台に活躍できる可能性が広がります。入学までのハードルは決して低くありませんが、その先に得られるものは計り知れません。
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