ヒュマニタス大学 医学部完全ガイド:英語で学ぶイタリア最先端医療教育の魅力とは?【2025年度版】

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設立の背景と沿革

ヒュマニタス大学は、イタリア・ミラノ郊外に位置する私立の医学部であり、最先端の医療教育と研究を提供しています。2014年創設と新設の大学ながら、医学・生命科学に特化した単科大学として設計段階から最新の教育手法を取り入れており、近年飛躍的にその知名度を上げています。

2017年にはミラノ郊外ピエヴェ・エマヌエーレに最先端の新キャンパスが病院隣接地に完成し、教育環境が飛躍的に充実しました。2018年には約240名分の学生寮が開寮し、遠方からの学生にもキャンパス内居住の機会を提供しています。その後も学部の拡充が進み、医学部に加えて理学療法学部や看護学部、技師養成課程などを開設し、多様な医療専門職教育を展開しています。2019年にはミラノ工科大学との協働による医学・工学統合プログラム「MEDTECスクール」を創設し、医学教育に新分野を取り入れました(詳細は後述)。さらに2023年にはキャンパス内にロベルト・ロッカ・イノベーション・ビルディング(最新設備の研究・起業支援棟)が開設されるなど、教育研究インフラの拡張が続いています。創立10年となる2024年時点で、ヒュマニタス大学には医学部を中心に約2,700名の学生が在籍し、これまでに1,400名以上の卒業生を輩出しています。大学の所在地はミラノ市中心部から南へ約10km離れた郊外に位置し、隣接するヒュマニタス病院・研究センターと一体となった環境で教育が行われています。

教育理念とカリキュラム

ヒュマニタス大学の医学部教育は、「科学的根拠に基づく知識と人間性の両立」を理念に掲げ、従来型の詰込み教育にとらわれない先進的なカリキュラムを採用しています。6年制の医学課程は、合計360単位・12学期にわたるモジュール制カリキュラムが組まれています。学習内容は臓器別・テーマ別に統合され、学年を通じて縦断的・横断的に知識を積み上げる構成です。講義に加え、双方向型のアクティブ・ラーニングを重視している点が大きな特徴です。少人数グループで課題に取り組む PBLやケーススタディ、コンセプトマップの作成、学習ポートフォリオ評価などを取り入れ、学生自らが主体的に考え議論する場を豊富に設けています。これにより知識の暗記ではなく応用力・批判的思考力を養い、将来医師として自律的に学び続ける姿勢を培います。

また臨床実習にも早期から段階的に触れられるよう工夫されています。入学直後の1年次から基礎的な臨床体験や病院見学が組み込まれており、医療現場に慣れ親しむ機会が与えられます。本格的な病院での診療実習が始まるのは3年次からで、附属のヒュマニタス病院において各診療科をローテーションし、患者の診察や回診に参加します。指導教員やチューターの監督の下、学生は診療手技や問診・身体診察、チーム医療の進め方を実地で学びます。国際色豊かな環境のため臨床現場でも英語が通用しやすく、実際、本学の医学課程には約40%が海外からの学生で占められており、多文化環境で医学を学ぶこと自体が学生の視野を広げるものとなっています。

評価方法にも最新の手法が導入されています。各科目の習熟度は筆記試験や口頭試問で測るだけでなく、OSCEによって臨床技能を検証します。OSCEは3年次以降の各学期末に実施され、模擬患者やシミュレーションを用いて診察技能・処置技能、患者とのコミュニケーション能力を客観的に評価するものです。こうした教育全体を通じ、ヒュマニタス大学は科学的探究心と臨床能力、さらに国際コミュニケーション力を兼ね備えた医師を育成することを目指しています。

国際的な連携とプログラム

ヒュマニタス大学はその国際性を活かし、国外との連携プログラムや留学機会を豊富に用意しています。特筆すべき取り組みとして、ヒュマニタス大学は「アフリカ・オナーズトラック」と呼ばれるグローバルヘルスプログラムを実施しています。これは選抜された医学部生がアフリカの医療現場で研修を行う特別課程で、4年次の希望者を対象に毎年募集されます。参加学生は事前にシミュレーショントレーニングや母校での感染症・熱帯医学に関する講義を受けたうえで、提携先のタンザニア・ザンビア・マダガスカルの病院や診療所に約4週間派遣されます。現地では限られた医療資源の中で多様な症例を担当し、手術見学や診療補助を通じて実践的に学びます。ヒュマニタス大学ではこの他にも、免疫学・救急医療・公衆衛生など各専門分野で優秀な学生を対象にしたオナーズトラックを複数用意しており、成績優秀者が通常カリキュラム外で高度な研究実習や臨床研修に取り組める制度があります。

さらに、ヒュマニタス大学は米国医師国家試験(USMLE)への対応にも力を入れています。大学は米国試験委員会(NBME)と連携し、希望者向けにUSMLE受験準備セミナーを定期開催しています。例えば2017年には初の試みとして、在学生対象のピアサポート型ワークショップが開かれ、米国の医療制度や試験概要、効率的な学習法について実践的指導が行われました。模擬試験や個別指導の機会も提供され、学生は在学中から着実に試験対策を進めることができます。このようにヒュマニタス大学は、学生のキャリアが国内外問わず広がるよう万全のサポート体制を敷いています。

研究体制と環境

ヒュマニタス大学の大きな特徴は、教育と研究が密接に結びついている点です。大学に隣接するヒュマニタス病院はイタリア保健省からIRCCS認定(科学研究を重視する医療機関の認定)を受けた研究病院であり、最新の医科学研究が日々推進されています。2005年にIRCCSに指定されたこの病院では、現在500名以上の研究者・臨床医が癌、免疫学、神経科学など幅広い分野で研究プロジェクトに従事しており、その成果は国際的にも高く評価されています。大学の教授陣はこの研究所と一体となっており、学生は講義や実習を通じて最先端の科学的知見に触れることができます。例えば、免疫学分野の世界的権威であるアルベルト・マンタヴァーニ教授がヒュマニタス研究所の科学部門を率いており、ヒュマニタス大学の病理学名誉教授も務めています。マンタヴァーニ教授は炎症と癌の関連性に関する研究の第一人者であり、その業績から「欧州で最も引用された免疫学者」と称されるほどの存在です。2024年にはアメリカ合衆国の科学アカデミー(NAS)外国人会員にも選出されるなど、国際科学界で著名な研究者が直接学生の教育に関わっています。こうした卓越した教員による指導のもと、最新の研究トピックが講義に反映され、学生は医学の発展に触発されながら学ぶことができます。

ヒュマニタス大学の学生には、在学中から研究に参加できる機会も豊富に用意されています。先述のオナーズトラック制度の中には免疫学トラックや腫瘍学トラックなど研究志向の強いプログラムもあり、選抜学生が通常カリキュラム以上の研究実習や論文執筆を経験できます。大学院レベルでも、ヒュマニタス大学は分子医学やデータサイエンスなどの博士課程(PhDプログラム)を運営しており、医学部生も早期から大学院のセミナーに参加したり研究助手を務めたりすることで、高度な学術環境に触れられます。

この恵まれた研究環境により、ヒュマニタス大学は設立からわずか数年で際立った研究成果を上げてきました。世界大学ランキングでも、英国のタイムズ高等教育(THE)ランキングにおいてヒュマニタス大学は創立10年にして世界トップ300位以内に位置づけられています。

キャンパスの施設とインフラ

ヒュマニタス大学のキャンパスは、学生の学習と生活を支える最新設備がコンパクトに集約されています。キャンパス内には講義棟・研究棟・図書館・寮・食堂などが配置され、日常のほとんどを敷地内で完結できる利便性の高い環境です。2019年に新設された「The CUBE」と呼ばれるトレーニング施設は、24時間365日利用可能な自己学習スペースとして医学生や若手医療者に開放されています。The CUBEには最先端のVR手術シミュレータや腹腔鏡トレーニング用機器、超音波検査トレーナー、救急処置モデル、縫合・外科手技練習ステーションなどが揃っており、多忙な実習スケジュールの合間でも自由にスキルアップを図れます。さらに、この施設は学生のイノベーション活動にも対応しており、医工連携の実験やスタートアップのプロジェクト開発にも利用されています。

学術インフラとしては、キャンパス内の図書館・科学資料センターが学生と研究者を支えています。館内の閲覧室とPC設置室は毎日朝7時から夜11時まで開放されており、学生は静かな環境で自習したりグループワークに取り組んだりできます。またオンライン学術データベースや電子書籍への学外アクセスも提供され、UpToDateなど臨床情報ツールも学内ライセンスで自由に利用可能です。

学生生活面では、キャンパス内の学生寮と福利厚生施設が充実しています。前述のマリオ・ルッツァット学生寮は単身用からシェアタイプまで多様な部屋を備え、遠方出身の学生や留学生に快適で安全な生活環境を提供します。大学は新入生にはこの寮入居を推奨しており、教室や病院まで徒歩数分という立地で勉学に専念できるメリットがあります(ミラノ中心部から公共交通で約1時間~1時間半と通学圏内ではありますが、キャンパス一体型の生活利便性は高い評価を受けています)。食事面では、キャンパスのカフェテリアで栄養バランスの取れたランチが学生価格で提供されるほか、気軽に利用できるビストロやバーも併設され、学生同士の交流の場ともなっています。さらに2023年に開設されたロッカ・イノベーション・ビルには、最先端の実験室や創業支援スペースのほか、新たにハイテク教室やスタディスペースが整備されました。ここでは3Dプリンターや電子顕微鏡、AI開発ツールなども利用でき、学生が研究やプロジェクトを発展させる拠点となっています。総じてヒュマニタス大学は、新しい大学ならではの近代的インフラを活用し、学生にとって学びやすく挑戦しやすい環境を整えています。

医学と工学の統合プログラム:MEDTECスクール

ヒュマニタス大学が近年打ち出した革新的な取り組みとして、MEDTECスクールがあります。これはミラノ工科大学とのパートナーシップにより2019年に始まった医学と工学のダブルディグリー・プログラムです。6年間の一貫カリキュラムで医学博士号(MD)と生体工学の学士号(B.Eng.)の両方を取得できる、欧州でも類を見ない教育課程となっています。全授業が英語で行われ、毎年の定員は計100名(EU出身80名・非EU出身20名)と厳選された学生が集います。
詳しくは下記記事にて解説しているため、是非ご覧ください。

ミラノの他私立医学部との比較

同じミラノにあるサンラファエレ大学も、私立の名門医学部として広く知られています。附属のサンラッファエレ病院はIRCCS認定を受けており、欧州屈指の研究水準を誇る施設として、臨床・研究両面で高い評価を得ています。大学自体も歴史があり、医学部のほか心理学部や哲学部も擁する総合大学として発展してきました。同じく英語による医学課程も設置されており、タイムズ・ハイヤー・エデュケーション(THE)による2025年版の世界大学ランキング・医学分野では世界126–150位、イタリア国内では第2位にランクされるなど、教育・研究の両面で非常に高い実績を持ちます。

一方、ヒュマニタス大学は2014年創立と新しい大学でありながら、その革新性と設計思想においてサンラファエレ大学と明確に異なるアプローチを取っています。医学・生命科学に特化した単科大学として設計段階から最新の教育手法を取り入れており、PBL主体の統合カリキュラムや大規模な臨床シミュレーション施設など、教育改革のスピードと柔軟性は特筆すべき点です。また、創立当初から医学課程を英語のみで提供しているため、学生の国際比率が非常に高く、多文化環境での学びを標準としています。これは、医学部のイタリア語課程と英語課程を並行して運営しているサンラファエレ大学とは、学生構成やカリキュラム編成において明確な違いを生んでいます。さらに、医療と工学を融合した独自のMEDTECプログラムなど、他大学にはない特色あるコースを展開している点も、ヒュマニタス大学の先進性を象徴しています。研究面では、免疫学の第一人者マンタヴァーニ教授ら世界的研究者を擁し、創立から10年足らずでTHE世界大学ランキングにランクインするなど、国際的なプレゼンスを急速に高めています。

もっとも、立地に関しては両校で違いがあります。サンラファエレ大学はミラノ中心部に比較的近く、地下鉄など公共交通機関でのアクセスも良好です。都市部ならではの生活の選択肢が多く、利便性を重視する学生にとっては魅力的な環境です。一方、ヒュマニタス大学はミラノ郊外のロッツァーノ地区に位置しており、市街地からも通学可能ではありますが、アクセスには1時間から1時間半程とやや時間を要します。ただし、キャンパス内には学生寮、研究病院、学習施設、カフェテリアなどが機能的に整備されており、日常生活や学業を一つのエリアで落ち着いて完結できる環境が整っています。都市的な賑わいから少し離れた場所で、学びに集中できる「コンパクトで統合的なキャンパスライフ」を望む学生には、むしろ適した環境と言えるでしょう。

まとめ

ヒュマニタス大学医学部は、英語で医学を学び国際医師への道を進みたい日本人学生にとって、大変魅力的な選択肢です。世界中の仲間と切磋琢磨しながらグローバルな視点と高度な知識・技術を身につけることで、将来は日本のみならず世界を舞台に活躍できる可能性が広がります。入学までのハードルは決して低くありませんが、その先に得られるものは計り知れません。

当校では、最新の大学情報はもちろん、合格者の実体験や現地病院の事情などを総合して、志望校選びや入試対策をサポートしています。無料の個別相談会も随時実施しております。「直接話を聞いてみたい」という方はお気軽にお申し込みください。複雑な出願手続きや受験準備を円滑に進めるためのアドバイスはもちろん、現地での生活サポートや卒後の進路に関する情報もお伝えいたします。

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