【イタリア医学部の学費・奨学金ガイド】:国公立・私立を徹底比較して考える医学部留学

受験情報

はじめに

イタリアの医学部進学を検討する際、「費用」はとりわけ重要なポイントです。現在、イタリアには英語で医学を学べる大学が国公立16校・私立5校あり、それぞれ学費制度や奨学金制度に違いがあります。特に国公立大学(国立を含む)と私立大学では、授業料の金額や減免制度に大きな差が見られます。

本記事では、イタリア医学部の学費や奨学金の基本情報を中心に、ほかの国との費用比較を交えながら解説します。留学費用の全体像を把握し、計画的に準備を進めるための参考にしていただければ幸いです。

イタリア医学部の学費

国公立大学の授業料

イタリアの国公立大学医学部(国立を含む)の授業料は、他国と比べて低く抑えられていることで知られています。年間の授業料は大学や地域によって異なるものの、概ね1年間で約156〜4,000ユーロ(約2万5,000円〜64万円)程度とされています。

例えば2024年度の場合、非EU留学生が収入に基づく減額制度を利用しないケースでの最安額は、ミラノ・ビコッカ大学の約1,256ユーロ(約20万円)とされ、一方で最大額はローマ・サピエンツァ大学の約4,580ユーロ(約73万円)という報告があります。多くの大学は2,000〜3,000ユーロ(約32万〜48万円)ほどに収まっており、2024年度の平均は2,900〜3,000ユーロ(約46万〜48万円)と見積もられています。

こうした傾向から、国公立大学であれば学費の負担を比較的軽く抑えることが可能です。

私立大学の授業料

私立大学医学部の授業料は国公立と比べて大幅に高く、大学にもよりますが年間約15,000〜20,000ユーロ(約240万〜320万円)程度が相場です。

例えば、ヒュマニタス大学(ミラノ)では、非EU学生の場合、年間2万ユーロ(約320万円)の学費がかかります。同じくミラノのサンラファエレ大学やローマのカトリカ大学、ユニカミラス大学などでも、概ね年間1万5,000〜2万ユーロ(約240万〜320万円)の学費が必要とされます。私立大学には国公立のような大幅なスライド制が基本的にないため、6年間にわたってこの水準の学費を支払う必要があります。

入学時・在学中の追加費用

入学前後には授業料以外にも様々な費用が発生します。まず、出願・入学時にはIMAT(イタリア医学部共通入学試験)の受験料(約130ユーロ=約2万1,000円)や各大学の入学手続き料、ビザ申請費用、航空券代などが必要です。在学中にも、教材費(教科書・実習用具など)や居住費(学生寮費・アパート家賃)、生活費(食費・交通費・光熱費・通信費など)を計上しなければなりません。

特に住居費や生活費は留学費用全体の大きな割合を占めます。当校が実際に現地で生活をしている学生から伺った情報に基づいた試算では地方都市での生活費(家賃・光熱費・食費など)は月額600〜900ユーロ(約9万6,000〜14万4,000円)、ミラノやローマなどの大都市では月額800〜1,500ユーロ(約12万8,000〜24万円)ほどかかる可能性があります。6年間の長期留学となるため、学費だけでなく総合的な費用を踏まえた資金計画が大切です。

また、教科書代や白衣・医療器具代なども毎年数万円〜十数万円程度かかる場合がありますが、図書館や中古品を活用することで負担を抑えることは可能です。国立医学部の場合、学費以上に生活費のほうが高くなる事例も珍しくないため、早めに資金計画を立てることが重要といえます。

イタリア医学部の奨学金・学費減免制度

国公立大学の奨学金制度

イタリアの国公立大学では、学生の経済状況に応じた奨学金・学費減免制度が整備されています。これらの支援策は給付型(返済不要)である点が大きな特徴です。

学費減免は、ISEE(イゼー)と呼ばれる世帯収入・資産状況を証明する書類を提出し審査を受けることで決定します。条件を満たすと学費が段階的に減額され、審査結果によっては年間の学費が156ユーロ(約2万5,000円)程度まで下がることもあります。(年間所得が20,000~30,000ユーロの家庭から段階的な減免の対象となる)

また、大学独自の奨学金だけでなく、各州の学生支援機関による地域奨学金(いわゆるDSUなど)も利用可能です。これは経済的支援を目的とした制度で、学費の減免に加えて生活費の補助も受けられる場合があります。公的な給付型奨学金を活用できれば、留学コストを大幅に抑えられるでしょう。

私立大学の奨学金制度

私立大学でも独自の奨学金制度を用意している場合があります。公的補助が少ない私立では多くがメリット型奨学金(成績優秀者奨学金)で、入学試験の成績上位者や在学中に優秀な成績を収めた学生に対し、授業料の一部免除や全額免除といった特典が与えられます。例えばヒュマニタス大学では、成績優秀な学生に学費免除の奨学金が支給されています。このような制度を励みに勉学に励む学生も多く、実際に奨学金を獲得すれば高額な私立大学の学費負担を軽減することができます。その他の私立医学部(サンラファエレ大学、カトリカ大学、ユニカミラス大学など)でも、それぞれ大学独自の奨学金・学費免除制度が設けられており、経済的に優秀な学生や学業成績の優れた学生を支援しています。私立への進学を検討する場合は、各大学の奨学金枠や応募条件(成績基準など)も事前に確認しておくとよいでしょう。

生活費支援の可能性

上記の地域奨学金(DSUなど)は、生活費のサポートも含まれる点で大きなメリットがあります。奨学金受給者には学費減免だけでなく、学生寮の提供や大学食堂の無料利用(食費補助)、さらに教科書購入費や課外活動費への補助金などが給付される場合があります​。
例えばトスカーナ州のDSU奨学金では、条件を満たした学生に対し年間の寮費免除や食事券支給など手厚い支援が行われています。これらを活用できれば、留学中の住居費・食費といった生活コストを大幅に削減することが可能です。遠方から渡伊する留学生にとって、住居と食事の支援は経済的に非常に心強いでしょう。
なお、日本から渡航する学生の場合、日本学生支援機構(JASSO)の第二種奨学金(有利子の貸与型)などを利用して生活費や学費の一部を賄うこともできます。ただし、日本の一般的な留学奨学金は貸与型(ローン)であり、借りられる額にも上限がある点には注意が必要です​。
返済不要の給付型支援が多いイタリアとは性質が異なるため、できる限り現地の減免制度・奨学金を優先的に活用し、不足分を日本の制度で補うといった形が望ましいでしょう。

イタリア医学部の費用面での優位性(他国との比較)

ハンガリー・チェコと比較

イタリア以外にもハンガリーやチェコなど、英語で医学を学べる欧州の国公立大学は存在し日本人留学生にも人気があります。しかし国公立大学で学費を比較するとイタリア医学部に軍配が上がります。例えばハンガリーの名門大学であるセンメルワイス大学の授業料は年間約US$18,200(約270万円)、国立のペーチ大学も約US$16,750(約250万円)と報告されています​。
またチェコのカレル大学(プラハ・カレル大学第1医学部)の授業料は約360,000CZK(約230万円)です​。
これらはいずれもイタリア国立医学部の平均的な学費(約30万〜50万円)の数倍にあたります。さらに、ハンガリーやチェコの医学部では外国人留学生向けの大幅な学費減免制度は基本的になく、原則として公定の高額な授業料を6年間支払う必要があります。イタリアのように所得に応じて学費が安くなる仕組みや、公的な給付型奨学金による生活支援は限られているのが実情です。そのためトータルの費用負担を見ると、イタリアで医学を学ぶ方が経済的に恵まれた環境だと言えます​

日本と比較

次に日本の医学部との比較です。日本の国公立大学医学部の授業料は年間約67万円(初年度は入学金等を含め約80万円)と定められており​、イタリアの国公立医学部の平均的な学費と比べても大きな差はありません。むしろイタリアの方が条件次第では安くなる場合もあります。ただし、日本の国公立医学部は定員が限られ入試競争率も極めて高いため、誰もが進学できるわけではない点に注意が必要です。

一方で、日本の私立医学部の学費は非常に高額です。多くの私立医学部では年間約500万円前後の授業料がかかり​、大学によっては初年度に多額の入学金・施設設備費や寄付金が必要となるケースもあります。6年間の総学費が数千万円規模に達することも珍しくありません。これと比較すると、イタリア国立医学部で6年間に支払う学費総額は数十万〜数百万円程度に収まり、日本の私立医学部より格段に経済的負担が小さいです。実際、日本の私立医学部に進学する代わりに費用を抑えてイタリア医学部を選ぶ学生もいるほどです​。
さらに日本人学生にとって、イタリアで医学を学べば欧州基準の医師免許資格を取得できるメリットもあり、費用対効果の面でも魅力的と言えるでしょう。

総じて、イタリア医学部の学費は日本や他国に比べて非常に低い水準にあります​。
特に国公立医学部の場合、その学費の安さはよく知られており、日本の医学部と比べてもずっと負担が軽いとされています​。
費用の点でハンガリーなど他の海外医学部より“リーズナブル”で学びやすい環境であることが、イタリア医学部の大きな魅力の一つです​

まとめ

イタリア医学部の費用面のポイントを整理すると、以下のようになります。

  • 国公立医学部の学費は年間数十万円程度と格安で、所得に応じた減免制度を利用すれば更に抑えられる(最低€156まで減額可)​。私立医学部は年間数百万円と高めだが、奨学金により負担軽減のチャンスあり。
  • 奨学金・減免制度として、国公立ではISEEを用いた学費スライドや地域奨学金(寮・食事補助含む)が充実​。私立でも成績優秀者向けの学費免除制度が存在。
  • 生活費は都市か地方かで大きく異なる。月あたり地方€600〜900・都市部€800〜1500が目安​で、6年間では学費以上に生活費がかさむ可能性もあるため注意​。住居は寮を利用するかルームシェアする、食事は学食を活用する、中古教科書を入手するといった工夫で節約可能。
  • 費用を抑える戦略として、早めにISEE取得手続きを行い学費減免の適用を受けること、締切に間に合うよう地域奨学金や学生寮に申請することが重要です。併せて物価や家賃の比較的安い都市の大学を志望校に選ぶ、奨学金だけで足りない場合は日本の留学ローンも検討する、といった計画も有効でしょう。

イタリア医学部は学費の安さと手厚い支援制度により、経済的ハードルを下げて医学を学べる魅力的な選択肢です。費用面の不安を抑えつつ夢の医師への道に挑戦するために、利用できる制度は最大限活用しましょう。そのためには最新情報の収集と十分な準備が欠かせません。

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