はじめに
イタリア医学部への留学を検討している方の多くは、「世界的にイタリアの医学部はどの程度の評価を受けているのだろう?」と疑問に思われるのではないでしょうか。
大学の世界ランキングはさまざまな企業や機関が独自の基準で公表していますが、本記事では、世界的に信頼度が高いとされるQS 世界大学ランキングを用いてイタリア医学部のレベルをご紹介します。
イタリア医学部が国際的にどのような評価を得ているのか、さらに日本の医学部やチェコ、ハンガリーなど東欧諸国の医学部と比較した際の位置づけについても、世界ランキングを基に詳しく解説していきます。
イタリア医学部への進学を検討している方にとって、大学のレベル感や世界的評価を知ることは重要なポイントとなりますので、ぜひご一読ください!
イタリアの医学部
近年、EU圏内での医師資格取得や英語コースの拡充、学費面などのメリットを背景に、イタリアの医学部は世界的に注目を集めています。
現在、イタリアには国公立大学の医学部が38大学、私立大学の医学部が5大学存在しています。通常、イタリアの大学ではイタリア語を用いて授業を行いますが、これらの大学のうち英語コースを提供しているのは、国公立大学が16大学、私立大学が5大学となっています。
また、通常の医学部とは異なる形で、医学教育と先端技術を融合させた「Medtech」プログラムもイタリア各地で導入されています。これらのプログラムは、臨床医学と工学的アプローチを同時に習得できる点が特長で、卒業時には医学と生体医工学の両方の学位を取得可能なダブルディグリープログラムとなっています。
現在は、国公立のマルケ工科大学をはじめ、私立のヒュマニタス大学、ビオメディコ大学の3大学で開講されています。
英語コースを提供している医学部
2025年度時点で、下記21大学(国公立16大学・私立5大学)が英語による医学部コース(6年制)を開講しています。
国公立大学に入学するためには、統一試験である IMAT (International Medical Admissions Test) を受験し、合格点を獲得する必要があります。
一方、私立大学へ入学する場合は、各大学が独自に実施する入試 (筆記試験や面接など) を突破する必要があります。
国公立大学 | 私立大学 |
---|---|
ミラノ大学 (University of Milan) | サンラファエレ大学 (Vita-Salute San Raffaele University) |
ボローニャ大学 (University of Bologna) | カトリカ大学 (University Cattolica del Sacro Cuore) |
ローマ・サピエンツァ大学 (Sapienza University of Rome) | ヒュマニタス大学 (Humanitas University) |
パドヴァ大学 (University of Padua) | ビオメディコ大学 (University Campus Bio-Medico di Roma) |
パヴィア大学 (University of Pavia) | ユニカミラス大学 (Saint Camillus International University of Health and Medical Sciences) |
トリノ大学 (University of Turin) | |
ミラノ・ビコッカ大学 (University of Milano-Bicocca) | |
フェデリコII(ナポリ)大学 (University of Naples Federico II) | |
ローマ・トルヴェルガータ大学 (University of Rome Tor Vergata) | |
パルマ大学 (University of Parma) | |
ヴァンヴィテッリ大学 (University of Campania Luigi Vanvitelli) | |
バーリ大学 (University of Bari Aldo Moro) | |
メッシーナ大学 (University of Messina) | |
マルケ工科大学 (Marche Polytechnic University / Ancona) | |
カターニア大学 (University of Catania) | |
カリアリ大学 (University of Cagliari) |
イタリア医学部の世界ランキング
QS 世界大学ランキング医学版2024を用いてランキングをまとめました。
参考までにQS 世界大学ランキングの評価基準は以下のとおりです。
- 学界での評価(40%)
- 論文被引用数/教員数(20%)
- 学生数/教員数(20%)
- ビジネス界での評価(10%)
- 留学生比率(5%)
- 外国人教員比率(5%)
大学名 | 世界ランキング | 国内ランキング | 国公立・私立 | 都市 |
---|---|---|---|---|
ミラノ大学 | 80位 | 1位 | 国公立 | ミラノ |
ボローニャ大学 | 87位 | 2位 | 国公立 | ボローニャ |
ローマ・サピエンツァ大学 | 92位 | 3位 | 国公立 | ローマ |
パドヴァ大学 | 112位 | 4位 | 国公立 | ヴェネツィア |
カトリカ大学 | 179位 | 5位 | 私立 | ローマ・ボルツァーノ |
ミラノ・ビコッカ大学 | 201-250位 | 6位 | 国公立 | ベルガモ |
フェデリコII(ナポリ)大学 | 201-250位 | 6位 | 国公立 | ナポリ |
パヴィア大学 | 201-250位 | 6位 | 国公立 | パヴィア |
サンラファエレ大学 | 251-300位 | 9位 | 私立 | ミラノ |
ローマ・トルヴェルガータ大学 | 251-300位 | 9位 | 国公立 | ローマ |
トリノ大学 | 251-300位 | 9位 | 国公立 | トリノ |
カターニア大学 | 401-450位 | 12位 | 国公立 | カターニア |
メッシーナ大学 | 401-450位 | 12位 | 国公立 | メッシーナ |
バーリ大学 | 451-500位 | 14位 | 国公立 | バーリ |
パルマ大学 | 451-500位 | 14位 | 国公立 | ピアチェンツァ |
マルケ工科大学 | 551-600位 | 16位 | 国公立 | アンコナ |
ヴァンヴィテッリ大学 | 651-700位 | 17位 | 国公立 | ナポリ |
世界ランキングでトップ100圏内に入っているのは、ミラノ大学(80位)、ボローニャ大学(87位)、ローマ・サピエンツァ大学(92位)で、いずれも国公立大学となっています。
私立大学としてはカトリカ大学が国内ランキング5位、サンラファエレ大学が9位と比較的上位に位置しています。
海外医学部の世界ランキング
近年ヨーロッパを中心に注目を集めている、医学部英語コースを設置している各国の大学ランキングをトップ10に絞って比較しました。
イギリス医学部 | 日本医学部 | イタリア医学部 | ハンガリー医学部 | チェコ医学部 |
---|---|---|---|---|
オックスフォード大学 2位 | 東京大学 42位 | ミラノ大学 80位 | センメルワイス大学 201-250位 | カレル大学 170位 |
ケンブリッジ大学 5位 | 京都大学 65位 | ボローニャ大学 87位 | セゲド大学 301-350位 | マサリク大学 401-450位 |
UCL 6位 | 大阪大学 112位 | ローマ・サピエンツァ大学 92位 | デブレツェン大学 351-400位 | パラツキー大学 501-550位 |
インペリアル・カレッジ・ロンドン 8位 | 東京科学大学 128位 | パドヴァ大学 112位 | ペーチ大学 401-450位 | ー |
キングス・カレッジ・ロンドン 13位 | 慶應大学 165位 | カトリカ大学 179位 | ー | ー |
エディンバラ大学 22位 | 東北大学 167位 | ミラノ・ビコッカ大学 201-250位 | ー | ー |
LSHTM 24位 | 北海道大学 201-250位 | フェデリコII(ナポリ)大学 201-250位 | ー | ー |
マンチェスター大学 30位 | 九州大学 201-250位 | パヴィア大学 201-250位 | ー | ー |
グラスゴー大学 48位 | 名古屋大学 201-250位 | サンラファエレ大学 251-300位 | ー | ー |
ロンドン大学クイーンメアリー校 57位 | 千葉大学 351-400位 | ローマ・トルヴェルガータ大学 251-300位 | ー | ー |
イギリスは世界トップランクに複数の大学が位置し、オックスフォード大学やケンブリッジ大学は名門として知られています。UCLやインペリアル・カレッジ・ロンドンなどロンドンを拠点とする大学も上位に並んでいます。
イタリアは世界最古の大学と言われているボローニャ大学をはじめ、ミラノ大学、ローマ・サピエンツァ大学など複数の国公立大学が世界100位前後に位置しています。
ハンガリーやチェコなど東欧の英語医学部も一定の評価を得ており、センメルワイス大学(ハンガリー)やカレル大学(チェコ)は国内トップ校として知られています。
イタリア医学部の難易度
イタリア医学部への留学を検討する際、大学ごとの難易度やカリキュラム、英語要件は一律ではありません。また、世界ランキングがそのまま難易度を示すわけではない点にも注意が必要です。以下では、特に押さえておきたいポイントをまとめました。
英語要件や募集定員の違い
- 都市部の大学は難易度が高い傾向
ミラノやローマなど大都市に位置する医学部は、立地が良いことから受験者が集中しやすく、必然的に倍率が上がります。ランキングで上位に入らない大学でも、国公立・私立を問わず、都市部にある大学は競争が激しくなるケースが多いです。 - 募集定員の差
大学によって定員数が大きく異なり、少人数制の大学では倍率が高くなりやすい傾向にあります。さらにNon-EU枠・EU枠の別で定員が異なるため、注意が必要です。 - 英語資格の要求レベル
国公立大学の多くはIMAT試験のスコアを重視しますが、一部の国公立大学と多くの私立大学において各大学ごとに英語資格の要件を設定しています。
卒業後の進路と病院グループの存在
イタリアにはいくつかの大手私立医療グループが存在します。北部を中心にしたグループが多く、中部~南部でも私立病院やクリニックチェーンは存在するものの、大きなグループ化は進んでいない傾向があります。
- サン・ドナテッロ・グループ (GSD):サンラファエレ大学医学部の運営を担う、イタリア最大の病院グループです。ダヴィンチ手術システムなどの最先端技術をいち早く導入しており、海外との共同研究も活発であり国際論文数も多いです。心臓外科や脳神経外科、移植医療など、多岐にわたる分野で高度医療を提供しています。
- ヒュマニタス・グループ (Humanitas):ヒュマニタス大学医学部を運営するイタリア第2の規模を誇るグループであり、ミラノ近郊の高機能病院を中心に教育・研究を行っています。がん免疫療法や分子標的治療など、急速に進歩する領域で国際的な研究プロジェクトを多数展開しています。
これらの私立大学は海外から多くの著名な教授陣を招聘しており、そのコネクションなどから在学中の海外研修、卒後の就職や研究・臨床留学を考える学生にとって有利な環境が整っています。
まとめ
イタリアには都市部の名門大学から地方の特色ある大学まで、国公立・私立合わせて多くの医学部が存在し、それぞれ学費や受験方式、英語レベル要件、連携病院・グループ、卒後のキャリアパスなどが大きく異なります。
大学選びにはさまざまな観点からの情報収集が不可欠ですが、各大学の年度ごとの募集定員、入試科目の違い、奨学金や学費免除の条件など、押さえるべきポイントは多岐にわたります。
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