「イタリアの国公立大学医学部英語コース試験」を徹底解剖!|IMAT試験の内容と難易度を知ろう!

受験情報

はじめに

IMAT (International Medical Admissions Test)はイタリア国公立医学部の英語コースに入学するための試験の略称です。イタリアの国公立医学部への受験を希望する学生は、どの大学を受験する場合でも、IMATの受験が必要となります(※編入試験を除く)。

イタリアの国公立医学部の平均倍率は年々上昇しており、昨年度では平均倍率が約10倍(IMAT20240Non-EU枠入試から算出)ともなる難易度が高い試験となっています。

直近倍率が上がり、合格難易度も高くなっているIMAT。この試験には実際どのような特徴があるのでしょうか?

今回はIMATの概要と、最新の受験者データを活用し、IMATの難易度に関しても詳細に解説していきます。

イタリアの医学部を検討する方にとって必見の内容となっておりますので、ぜひご一読ください!

IMATとは

IMATは、International Medical Admission Testの略であり、イタリア国公立医学部の英語コースに入学する際に全員が統一試験になります。

年に1回、9月ごろに行われ、イタリアもしくは海外会場にて対面形式で受験します。日本は海外会場に含まれていないため、日本で受験することはできません。当校の日本人学生ではイタリアの現地会場の他にドバイや香港で受験される方が多い状況でした。

IMATはマークシート方式で全部で60問の筆記試験であり、書類審査や面接試験はありません。
学力試験の結果のみで合格が決まることから、日本や他国の医学部受験において書類審査や面接試験が合格における障壁となっていた方でも試験で高得点が取れれば合格ができる環境にあります。

試験科目は大きく分けて5科目であり、一般知識(Reading skills and Knowledge acquired during studies)、論理的推論·判断推論(Logical Reasoning & Problem Solving)、生物 (Biology)、化学(Chemistry)、物理·数学(Physics&Mathematics)が出題されます。

試験問題は5択の選択式となっており、満点は90点、配点は正答を選ぶごとに+1.5点、誤答を選ぶと-0.4点、未解答のままだと0点となる加点・滅点方式であり、科目ごとの配点は変わりません。

イタリア国公立医学部入試の大きな特徴は、誤った答えを選ぶと減点される可能性があることでしょう。知識や解法パターンが頭に入っていても、ケアレスミスが多ければ、その分減点されるため、合格が難しくなります。点数を落とさないためには、自信のない問題に関しては回答をしないといった選択をすることも重要になってきます。

近年は受験者数の増加に伴って合格のボーダーラインとなる点数も上昇傾向にあるため、各科目で適切な受験対策を取り、高得点を狙っていく戦略が重要になります。

IMATの受験枠の違い

IMATではNon-EU枠とEU枠の2つの受験枠があります。
両者は入試問題や配点は同じであるものも、それぞれ募集枠で募集定員や併願できる大学の数が異なります。

例えばEU枠では全大学に出願可能なのに対して、Non-EU枠で出願可能なのは1大学のみになります。

Non-EU枠とEU枠への受験は自分で希望の枠が選べるのではなく、国籍や滞在許可証の有無など受験者のバックグラウンドによって異なります。

また、受験する大学によって、EU枠・Non-EU枠に該当する要件も変更になるため、どちらの枠で受験するのかを確認することが必要となります。

誤って別の受験枠で出願すると、合格最低点に達していても入学できませんので、ご注意ください。

一般的には、次のように分類されます。(※大学により詳細な区分は異なります)

  • Non-EU枠 : EUの市民権又は国籍をもたず、イタリアに1年以上滞在していない受験生
  • EU枠 : EUの市民権をもつ受験生(Non-EU枠に該当しない受験生)

そのため、日本国籍の受験生で他の国籍をもたない、かつイタリアに長年滞在していない場合、すなわち、ほとんどの日本人受験生は、Non-EU枠での受験となります。

2024年度IMAT試験での大学ごとのEU枠・Non-EU枠はこちらになります。

大学名Non-EU枠定員数EU枠定員数
ミラノ大学1555
ボローニャ大学2097
ビッコカ大学1830
トルヴェルガータ大学1540
パヴィア大学40103
フェデリコII(ナポリ)大学2515
サピエンツァ大学1345
パルマ大学4575
パドヴァ大学2575
トリノ大学3270
ヴァンヴィッテッリ大学5060
マルケ大学6020
メッシーナ大学5655
バーリ大学1169
カターニア大学3030
カリアリ大学2080
合計枠数475919

まず、2024年度のIMAT試験ではNon-EU枠は475名、EU枠は949名と定員数に大きな差があります。一方で次項で詳しく説明しますが、Non-EU枠に関しては各大学ともに定員数を増やしている傾向にあります。

IMATの募集定員数に関して

2021年度から2024年度までのNon-EU枠のイタリア国公立大学英語医学部コースの募集人数をまとめています。

新設の医学部英語コースもあるため、開設前の年度では「-」と表示しています。

また、一部の大学では中国人留学生のためのマルコポーロ枠が用意されていますが、マルコポーロ枠を含めた募集人数を記載しています。

各年度の募集定員は、次のとおりです。

大学名 2021 2022 2023 2024
ミラノ・ビコッカ大学 13 16 18 18
ミラノ大学(IMS) 25 25 25 15
トリノ大学 32 32 32 32
パヴィア大学 40 40 40 40
パドヴァ大学 20 25 20 25
パルマ大学 40 40 45 45
ボローニャ大学 20 20 20 20
マルケ大学 25 55 60
サピエンツァ大学 10 10 13 13
トルヴェルガータ大学 10 10 15 15
メッシーナ大学 38 42 56 56
フェデリコ2世大学 25 25 25 25
ヴァンヴィテッリ大学 40 40 50 50
カターニア大学 30
バーリ大学 8 11 11 11
カリアリ大学 20

※:中国人留学生向けのマルコポーロ枠のある大学は「※」を付けています。2021年度と比較して定員数が増加している大学の行は緑色に塗っています。

2021年から2024年にかけて14校中10校がNon-EU枠の定員を増やしており、またカターニア大学とカリアリ大学の2校は新たにNon-EU枠向けの英語医学部コースを開校しています。こちらの数値の推移からNon-EU枠向けの学生確保に前向きな大学が多いことがわかるかと思います。一方で名門と呼ばれる「ボローニャ大学」や「ミラノ大学」といった大学は定員数を増やしておらず、引き続きレベルの高い競争が繰り広げられています。こうした定員数の推移を理解して受験校を選んでいくことも合格に向けて重要になっています。

IMATの倍率に関して

続いてIMAT試験の倍率を見ていきましょう。

下記は2024年度のIMAT試験における、各大学のNon-EU枠の倍率をまとめた表になります。

各大学倍率は主に5倍から10倍程度と、レベルの高い競争となっています。特にミラノ大学やサピエンツァ大学などの難関大学の倍率が高い傾向にあります。一方で地方都市の大学は倍率が低い傾向があるため、こうした倍率の観点も受験校を考える上で重要となってきます。

IMATの合格最低点に関して

IMATは年度によって各科目の問題数が変更となる場合はありますが、どの年度も問題数は60問、満点は90点となっています。

ではこのIMATで合格するためにはどのくらいの点数が必要なのでしょうか。

今回は、EU枠とNon-EU枠の最終的な合格最低点(繰り上げ合格者の合格最低点)を記載しました。

それぞれの受験枠の合格最低点は次のとおりです。

大学名EU枠Non-EU枠
2022年2023年2024年2022年2023年2024年
ミラノ・ビコッカ大学48.246.366.749.254.272.6
ミラノ大学(IMS)52.047.669.251.860.275.7
トリノ大学45.139.062.050.149.070.8
パヴィア大学45.839.861.843.853.371.2
パドヴァ大学47.141.164.650.749.571.6
パルマ大学44.437.660.341.950.159.1
ボローニャ大学48.443.965.651.559.174.5
マルケ大学43.737.560.234.543.060.3
サピエンツァ大学48.246.765.552.650.873.4
トルヴェルガータ大学46.040.262.044.653.460.6
メッシーナ大学42.935.257.642.936.961.4
フェデリコ2世大学48.145.264.044.452.068.1
ヴァンヴィテッリ大学42.937.059.541.947.363.2
カターニア大学34.958.457.2
バーリ大学43.336.259.142.631.265.8
カリアリ大学56.956.5

こちらの表でまず目につくのは2023年と2024年の合格最低点の差ではないでしょうか。2023年から2024年にかけて受験者数が増えたこともありますが、2024年の合格最低点が大きく上がっているのは生物を中心に問題の難易度が大幅に下がったことが要因となっています。2022年、2023年の得点データがほぼ同等なことからもわかるように、2024年は例年と比較しても合格最低点が高い年となっています。

次にEU枠とNon-EU枠の点数の差を見ていきましょう。2024年では全16大学のうち、12大学でEU枠の方がNon-EU枠と比較して合格最低点が低いという結果となっています。特に緑色のハイライトをつけている「ミラノ大学」、「ボローニャ大学」、「サピエンツァ大学」といった難関大学と呼ばれる大学に関してはEU枠の方がNon-EU枠よりも合格最低点が5点以上低くなっており、EU枠の方が合格しやすい状況となっています。

またNon-EU枠では1大学のみしか出願できないのに対して、EU枠では全大学に出願が可能なことも考慮すると、難関大学を中心にEU枠の方が合格はしやすい環境と言えるでしょう。

冒頭で「ほとんどの日本人受験生」はNon-EU枠での受験となるとお伝えしましたが、日本人でもEU枠でIMATを受ける方法がないわけではありません。というのも「イタリアに1年以上滞在している」という条件を満たすことで国籍に関係なくEU枠での受験が可能となるからです。実際に当校でもEUの国籍を持たない日本人学生で2024年のIMATをEU枠で受験した学生が複数います。そのため「EUの市民権を持っていないから」等でEU枠での受験を諦める必要はありません。

一方で「イタリアに1年以上滞在している」という条件でのEU枠受験は「イタリアでの滞在」という観点で、申請が認められるケースが人により異なる部分があったり、複雑な手続きが必要となる場合もありますので、個人で進めることはあまりおすすめできません。当校では申請を希望される方のケースに合わせて適切な手続きを取ることで複数の学生がEU枠で受験していますので、興味のある方は下記の無料個別説明会のフォームからお気軽にご相談いただけますと幸いです。

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まとめ

本記事ではIMATの概要から、最新の受験者データを活用した直近の傾向等を記載しました。

まとめとしては下記の内容をご留意お願いいたします。

  • IMAT試験はイタリア国公立医学部英語コースの統一試験で、筆記試験のみで合否が決定する。
  • 2021年から2024年にかけて、多くの大学でNon-EU枠の定員数が増加している。
  • 一方で受験者数も増加傾向にあり、倍率も年々上がってきている。
  • Non-EU枠は1大学のみ出願可能、一方でEU枠は全大学に出願可能で合格最低点もNon-EU枠と比較して低い傾向。
  • 日本人でも条件を満たせば「EU枠」での受験は可能だが、複雑な手続きが必要。

本記事をきっかけにしてイタリアの国公立医学部に興味を持つ方が一人でも増えれば幸いです。

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