【海外医学部への道】 アメリカ、イタリア、ハンガリー、中国など 7カ国の海外医学部の特徴を公開

受験情報

はじめに

国内の医学部進学は長らく「医師になるための唯一の道」と考えられてきましたが、グローバル化の進展に伴い、新しい選択肢として海外の医学部進学を検討するケースが増えています。英語による授業や多国籍の学生との交流によって国際的な視野を広げ、キャリアの選択肢を拡大するだけでなく、経済的なメリットを享受できる場合もあります。今回は各国医学部の特長や日本で医師資格を取得する際のステップについても徹底解説していきます。

海外医学部の特徴

令和6年度に文部科学省が発表した統計によりますと、日本国内の医学部は全81校、約9,500人の募集定員に対して、約12万人が受験しています。合格率は全国平均で約8%程度と非常に狭き門になっています。
また、学費も国内の医学部進学における大きなハードルの一つです。国立大学の場合は6年間で約360万円前後ですが、私立大学では平均3,200万円に上り、一部の大学では4,000万円を超える場合もあります。こうした高額な学費負担が大きな経済的障壁となり、医学部進学を断念してしまうケースもあるのです。
そこで、新たな選択肢として注目されるのが海外医学部進学になります。海外医学部進学の主な特長としては、以下の4点が挙げられます。

入試の門戸が広い

入試の重点ポイントは国によって異なりますが、偏差値重視の日本の入試とは異なり、学生一人ひとりの適性や能力を多面的に判断する国が多いです。科目試験の点数だけでなく個性や将来性といった面が評価されるため、基礎的な理系知識や論理的思考力を中心とした問題が出題される傾向にあります。難解な数学や物理が苦手な方にとっては、挑戦しやすい入試と言えるでしょう。

学費が比較的安価

国内、特に私立大医学部の場合、6年間の学費総額が平均で3,200万円に達し、多くの受験生や家庭にとって大きな経済的負担になります。一方、海外医学部はこれと比較すると学費が抑えられている点が大きな魅力です。たとえば、西ヨーロッパ(イタリア、ドイツ、フランスなど)では年に約30万円程度、東ヨーロッパ(ハンガリー、チェコ、ポーランドなど)では約200万円程度、アジア(中国、フィリピンなど)では約100万円程度とされています。

卒業後に日本の医師免許取得も可能

海外で学ぶ医学の内容は、日本国内の医学部と大きく異なるわけではありません。海外の医学部を卒業しても、日本の医師国家試験に合格すれば日本で医師として働くことが可能になります(図1)。ただし、海外の医学部を卒業した場合には、厚生労働省が実施する個別審査を受けなければなりません。この審査で適切な基準を満たしていると判断された場合は、日本語診療能力調査を経て医師国家試験を受験する資格が得られます。しかし、基準を満たさないと判断された場合には、予備試験の受験や、1年以上の実地修練が必要となる可能性があります。

図1) 日本の医師国家試験の流れについて

様々なキャリアパスが選択できる

上記のとおり、日本の医師国家試験を受験して国内で医師として働く道を選ぶだけでなく、卒業した国で取得した医師免許を活かし、そのまま現地の病院や医療機関で勤務することも可能です。さらに、WHOや国連、国境なき医師団といった国際機関で、医師や医療関連の専門家として活躍を目指すこともできます。

国・地域ごとの医学部入試と制度

「海外医学部」と一口に言っても、国や地域によって入学の難易度や学費、学習環境は大きく異なります。英語圏のアメリカやイギリスは進学の難易度が非常に高いことで知られている一方、比較的進学がしやすい国としては東ヨーロッパではハンガリーやチェコ、ポーランド、西ヨーロッパではイタリアやマルタ、アジアでは中国やフィリピンなどが挙げられます。これらの国々では日本人向けの説明会やサポート体制が整備されており、医師を志す学生にとって、以前と比べてはるかに恵まれた環境になっていると言えるでしょう。

アメリカの医学部

アメリカの大学にはいわゆる「医学部」がなく、医学教育は大学院レベルの「メディカルスクール」で行われます。最初に一般の大学を卒業し、その後メディカルスクールへ進学する必要がありますが、メディカルスクールには多額の税金が投入されているため、卒業後にアメリカに貢献する人材を優先的に育成するという基本方針があります。さらに、一部の州立大学では外国人の入学を制限しているケースもあるため、アメリカ国籍を持たない外国人が入学するのは非常に困難とされています。
また、メディカルスクールでは大学時代の成績やエッセイ、推薦状、課外活動、テスト、面接など、多面的な審査が行われます。学費は非常に高額で、大学からメディカルスクールまで合わせると約3,000~5,000万円にもなる場合があります。メディカルスクール卒業後はUSMLE(United States Medical Licensing Examination)と呼ばれる3段階(Step1~3)の国家試験に合格することで医師免許を取得できます。アメリカで医師として働く道のりは長く険しく、学費も高額になるため、計画的な準備と十分な情報収集、奨学金の活用など、戦略的な対策が必要です。

イギリスの医学部

イギリスの医学部教育は主に英語で行われるため、外国人が入学するには高校卒業資格と“Aレベル”という試験、または同等の資格が必要です。さらに語学要件も厳しく、一般的にIELTSで7.0以上のスコアが求められます。留学生の場合、国立大学における授業料は年間約500~700万円ほどです。出願は毎年秋頃にイギリスの総合出願機関UCAS(Universities and Colleges Admissions Service)を通じて行われ、最大4つの医学部に出願できます。7~10月頃に受験するUCATやBMATなどの試験スコアと、志願書や推薦状、面接などを総合的に評価して合否が決まります。イギリスには約40の医学部があり、卒業後にイギリスで医師として働くだけでなく、英語での医学教育を活かして世界各国でキャリアを築くことも可能です。

中国の医学部

中国の医学部は大学によって5年制のコースや東洋医学を学ぶ大学もあるため、将来的に日本の医師免許を取得したい場合には、厚生労働省の個別審査基準を満たすカリキュラムであるか注意して確認する必要があります。また、中国語で学ぶ大学と英語で学ぶ大学の2通りがあることも特徴の一つです。日本に事務局を置いている大学は留学生へのサポートが手厚いことが多いです。たとえば北京大学では、授業は中国語が中心ですが、事務局での語学学習を経て語学要件を満たしてから渡航する学生が多いです。同大学医学部へ進学する際には、合格後に「医学部進学コース」へ参加することが必須で、東京で中国語や理数系科目を学習してから現地での生活や学習に備えられます。英語で学ぶ医学部の大学としては復旦大学や吉林大学など全部で44校があり、復旦大学では西洋医学のプログラムを英語で提供しているため、南アジアからの留学生が多数在籍しています。学費は100~150万円程度の大学が多く、経済的なメリットを享受できる点も大きな魅力です。そのため、中国語の学習に抵抗がない方にとっては大変良い環境と言えるでしょう。

イタリアの医学部

イタリアには英語の医学プログラムを提供する大学が国立・私立を合わせて21大学あり、EU圏外の留学生としては960名分の枠が設けられています。ミラノ大学やボローニャ大学といった名門国立大学をはじめ、医学と工学を同時に学ぶダブルディグリーなど最先端のプログラムが揃っているため、世界中から多様なバックグラウンドを持つ留学生が集まっています。イタリアの医学部を卒業するとEU圏内で通用する医師免許を取得できるため、イタリアだけでなくドイツやフランスなどEU諸国でも医師として働くことが可能です。入学試験には、日本の高校卒業が受験資格として認められるIMAT(イタリア国公立英語医学部共通入学試験)が用いられ、日本の共通テストに似た形式で行われることから国内大学との併願がしやすいこともあり、多くの日本人学生が受験しています。学費は国公立大学で年間約30万円、私立大学でも約300万円程度と、日本の私立大学医学部に比べて非常に安価です。さらに平均卒業率が90%以上という点も、大きな特色になっています。

ドイツの医学部

ドイツの医学部では主にドイツ語で授業が行われます。外国人が入学するためには、母国の大学で2年以上の教育を受けるか、高校卒業後に1年間の予備コースを修了している必要があり、さらにCEFRのC1レベルといった高いドイツ語能力が求められます。日本国内には入学手続きをサポートする事務局がほとんどないため、入学準備を独力で行う必要があるなど、進学のハードルは非常に高いです。しかし、国立大学では授業料が無料あるいは年間10万円程度、私立大学でも年間300万円程度と学費が安い場合が多いです。入試では書類審査が中心で、高校時代の成績が重要視されます。ドイツには約35校の医学部があり、すべて併願が可能です。特に、世界大学ランキングで30位台に入っているハイデルベルク大学、ミュンヘン大学、ベルリン大学などは人気が高く、卒業後はドイツでの就業だけでなく、スイスをはじめとするドイツ語圏の国々や、EU加盟国などで働く道も開かれています。

ハンガリーの医学部

ハンガリーの医学部は、比較的早い段階から英語でのプログラムを開始しており、多くの日本人卒業生がEU内外で医師として活動しています。学費は年間授業料が約250万円程度と、国内の私立大学医学部に比べて経済的負担が軽い点も魅力です。現在、国立センメルワイス大学、ペーチ大学、セゲド大学、デブレツェン大学の4大学で英語の医学プログラムが提供され、入学前には英語や生物、化学、物理の基礎を学習する1年間の予備コースが用意されています。予備コースから本科コースへの進学率は90%以上と高く、基礎学力に不安のある学生でも安心してチャレンジできる環境と言えます。入学試験は一次審査と二次審査に分かれ、一次審査(筆記と面接)は年間で10回程度実施され、筆記では英語と生物・化学・物理のうち2科目を選択します。二次審査では理系3科目の選択問題と英語での面接が行われ、4大学合わせて予備コースに25名、本科コースに5名の募集枠が設けられています。ただし、入学後の勉強は厳しく、6年間をストレートで卒業できる割合は30%前後で、入学者の約3分の1が退学を選択するという厳しさもあります。卒業後はEU圏内で通用する医師免許を取得できるため、欧州を中心に活躍する機会が広がります。

チェコの医学部

チェコでは、国立マサリク大学や国立カレル大学が英語の医学コースを提供しています。予備コースには15~20名、本コースには10名分の日本人枠が用意されており、年間に5回ほど実施される一次審査では筆記試験(英語+生物・化学・物理から2科目選択)と面接があり、4月中旬頃に行われる二次審査では理系3科目の選択問題と英語での面接が課されます。年間学費は250~300万円ほどで、生活費を加えても6年間で3,000万円程度に収まる点が特徴です。入学後、1~3年生は基礎医学や解剖学、組織学などを中心に学び、4年生からは病院実習に進んで臨床科目を一通り学習します。学期ごとの試験に加え、期末試験には口頭試験も含まれるため、学習のハードルは高く、6年間のストレート卒業率が30%前後という厳しさも持ち合わせています。

まとめ

国際性が一段と重要視される現代社会では、医師を志す学生にとって、国内の医学部だけでなく海外の医学部へ進学する選択肢も十分に検討に値します。特に英語で医学を学ぶことは、国内外での臨床や研究などの場面で視野を広げる大きな契機になります。近年は大学公認の事務局を設置し、日本からの学生を積極的に受け入れる国も増えているため、海外医学部への進学は、以前より身近な選択肢になっているといえます。
一方で、国ごとに入試方法や学費が大きく異なるだけでなく、留年率や退学率の高さなど、卒業までの道のりが容易ではないといった実情もあります。そのため、海外の医学部への進学を検討する際は、各国の正確な情報を集めるとともに、それぞれの教育環境やサポート体制を慎重に吟味することが大切です。

当校では、最新の大学情報はもちろん、合格者の実体験や現地病院の事情などを総合して、志望校選びや入試対策をサポートしています。無料の個別相談会も随時実施しております。「直接話を聞いてみたい」という方はお気軽にお申し込みください。複雑な出願手続きや受験準備を円滑に進めるためのアドバイスはもちろん、現地での生活サポートや卒後の進路に関する情報もお伝えいたします。

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